2016年06月25日

どっちのビルに入ろうかなあと悩む
金髪の主人公
けっきょく右側のボロいビルに
あれ、精肉売り場 ちょっと照明暗いな
ほんとはこの辺に
楽団が演奏していて 賑わってるはずなんだ
このビルに
はいってから気づきあたる
意外とボロいな
シブさを感じられるはずだったが、無理だ
やはり左側のビルがよかったか
などと悔いそうになる
入ったものはしょうがない
しばらくいよう
と、なる

肉屋のおやじは みけんにシワよせて
客なんていないんだろう
自分の爪ばかり見つめていた
昔ながらの口数の少なそうなおやじだ
しかしこのビルに
Wi-Fiはつながってないのか
天井もやけに低いな

二階の窓から外を見やると
下りの各駅停車がホームから出たところだった
どうも田舎の駅だ
窓枠の溝に蚊が死んでいる
ろくに掃除もしていない
こういうビルが
嫌いではないんだが
なにか小学校の頃をおもいだすようだ
似てはいないはずだけれど
共通する部分がある
全然洗練されていなくて
だから、自分がダサくても心配じゃなかった
クラスで一番どんくさかったやつ
このビルに いま働いてるんじゃないか
そんな予感がする

階段を上がって三階に
行く途中で下を見ると
小さな女の子が座って手の平を見つめていた
どうしたんだろう?と気になって
しばらく見つめていると、彼女は立ち上がり
たぶん トイレへと駆けていった
そのとき このビルのことが明確に
好きになったと気づいた


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